50代でも住宅ローンは組める?審査に通る無理のないローンを組むコツを解説!

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50代でも住宅ローンは組める?のアイキャッチ

「50代でも無理のない住宅ローンは借りられる?」「頭金はいくら必要?」といった疑問を解決します!

50代でローンを借りるメリットやデメリットなど、住宅ローンに関する知識を幅広く説明します。無理のないローンを組む5つのコツや、返済シミュレーションもご紹介します。

20~40代についての解説は、以下のリンクを参照してください。

年齢ごとの住宅ローン記事
20~29歳 30~39歳 40~49歳

この記事は、ファイナンシャルプランナーで、宅地建物取引士の岩井さんに監修してもらいました!

監修 岩井 勇太
チャット不動産イエプラ メディア事業部
ファイナンシャル・プランナー
宅地建物取引士

日本FP協会認定のFP。不動産やライフプランに関する専門知識と経験を活かして、最適な物件選びから、長期的にみて損しない住宅購入までをサポートしています。一人暮らしやファミリー世帯など、幅広い世帯からリピートをいただいています。

50代でも住宅ローンは組める

50代でも住宅ローンは組めます。借入開始の上限年齢を、65~70歳としている金融機関が多いからです。

定年退職まで10~15年なので、最長の35年で借りるのは難しいです。完済が現実的な計画を立てて、金融機関のローン審査にも通る必要があります。

返済中に収入の増減が大きく、年金生活に入る前に計画的な「繰り上げ返済」で完済を早めるのが基本です。

50代の住宅ローン返済イメージ図

金融機関のローン審査は、40代までよりも厳しくチェックされます。返済中の健康状態や、定年後にどう返済していくかを心配されやすいためです。

岩井
岩井
老後資金を貯めながら、定年付近で完済できる計画が立てられると理想的です。返済と審査どちらの心配も減らせます。無理のないローンを組むコツや審査の対策は、後ほど解説します。

50代の住宅ローン利用者は10%未満

50代の住宅ローン利用者は少数派で、住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者の実態調査」によると、全体の10%未満です。直近5回分のデータを表にまとめました。

住宅ローン利用者の年齢別の割合を示したグラフ

出典:住宅金融支援機構 住宅ローン利用者の実態調査より作成

数は少ないですが、50代で住宅ローンを組む人は一定数いるとわかります。同統計によると、50代で家を買う主な理由は「老後の安心のため(45.0%)」がもっとも多いです。

すでに住宅を購入している世帯が多く、2018年の「住宅・土地統計調査」の集計によると、50~59歳の持ち家率は67.9%でした。

50代は現役のうちに無理のないローンを組むタイムリミットと言えます。老後に備えるなら資産になる持ち家のほうが、賃貸に住むよりも安心できます。

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50代で収入のピークを迎える人が多い

50代は収入のピークを迎える人が多いです。購入時の支払い能力は高く、子どもの教育費が落ち着いて家計に余裕ができます。

ただし、60歳以降は定年退職や再雇用などで収入が下がっていきます。老後に備えて予算は抑える必要があります。

平均年収の統計でも、50代まで年収が上がった後に、60代からは下がる傾向があります。

年齢・性別ごとの平均年収の推移をまとめたグラフ

出典:国税庁 令和2年分 民間給与実態統計調査

返済に時間がかけられないため、住宅ローンの負担は大きいです。返済期間が短いほど毎月の返済額は増えます。

役職定年で50代後半から年収が下がったり、体調を崩して仕事が続けられなくなると返済が難しくなります。

ボーナスや歩合給など、確実ではない収入には頼らない計画を立てるべきです。返済は毎月あるので、生活費が圧迫されない借り入れにしましょう。

老後の暮らしを考えて物件を選ぶべき

50代は老後の暮らしを考えて物件を選ぶべきです。立地や周辺環境、物件の広さやお部屋の数をよく考えて、老後の住まいに適しているか判断しましょう。

国土交通省の統計では、50代で家を買った人は、新築から中古まで幅広い住まいの選択をしています。

住宅ローン利用者の年齢別の割合を示したグラフ

出典:国土交通省 令和2年度住宅市場動向調査報告書より作成

新築や広い物件は、販売価格が高いです。必要以上の予算を組んでいないかは、慎重に考えるべきです。

夫婦で暮らすなら、コンパクトな間取りの中古マンションがおすすめです。新築マンションより平均40%ほど安く、内装は工事すれば新築同様にできます。

通勤がなくなった後まで考えて郊外を選ぶなど工夫して、予算をなるべく抑えましょう。老後の理想の住まいについては、次の記事で詳しく解説しています。

▶老後の理想の住まいの解説はこちら

50代は住宅ローン審査に対策が必要

50代は住宅ローンの審査に対策が必要です。ローンを借りずに貯金などの「自己資金」から払う割合を増やしたり、返済期間を短く設定するなど工夫が必要です。

20~40代より貯金がある50代は、自己資金を増やす手段から考えましょう。借入額が少ないほど審査は通りやすくなります。

審査の面だけでなく、借入額を減らしておけば毎月の返済にゆとりが作れます。

購入資金の20~30%の頭金を用意する

購入資金の20~30%の「頭金」を用意して借入額を減らすと、審査に通りやすくなります。

統計でも購入資金の20~30%は自己資金で、頭金を払う人が多いとわかります。

購入資金 自己資金 割合
注文住宅
(土地+建築)
5,359万円 1,654万円 30.9%
新築戸建て
(建売)
3,757万円 775万円 20.6%
新築マンション 4,393万円 1,124万円 25.6%
中古戸建て 2,696万円 876万円 32.5%
中古マンション 2,213万円 818万円 37.0%

出典:国土交通省 令和2年度住宅市場動向調査報告書より作成

頭金を払うと借り入れを抑えられる他に、金利(利息)の優遇が受けられるケースがあります。手元に残しておく資金も必要なので、払いすぎには気を付けましょう。

2019年に、金融庁の「市場ワーキング・グループ報告書」で、老後に1,300~2,000万円は貯金が必要と発表され話題になりました。

定年時点で手元に2,000万円近く残せるように、余裕がある返済計画を立てられると理想的です。頭金を払うメリットやシミュレーションは、次の記事でも解説しています。

▶マイホーム購入の頭金の解説はこちら

頭金なしでもローンは組める

頭金なしでも物件価格100%の「フルローン」が組めます。頭金は予算に応じて調整できるので、手元に残すお金とのバランスを考えて払いましょう。

頭金の他に自己資金で払う部分には「諸費用」と「手付金」があります。諸費用は物件価格と別にかかる手数料などで、ローンにも含められます。相場は販売価格の10%ほどです。

手付金とは、売買契約を結んだ証として前払いするお金です。相場は物件価格の5~10%で、20万円、50万円など定額の場合もあります。

住宅購入に必要な費用の図解

手付金は最終的に代金に充てられます。購入時の初期費用を減らしたいときは、手付金の金額までは抑えられます。

実際は、購入価格の20~30%は自己資金から払ったほうが安心です。頭金が払えない状況なら、購入価格を抑えたほうが破綻するリスクは抑えられます。

完済年齢の上限から逆算した返済期間にする

完済年齢の上限から逆算した返済期間のローンを組みましょう。金融機関ごとに上限があり、75~80歳までの金融機関が多いです。

借入時と完済時の年齢上限の例を、表にまとめたので参考にしてください。

借入時の年齢 完済時の年齢
三菱UFJ銀行 70歳の誕生日まで 80歳の誕生日まで
三井住友銀行 70歳の誕生日まで 80歳の誕生日まで
りそな銀行 70歳未満 80歳未満
みずほ銀行 71歳未満 81歳未満
群馬銀行 65歳未満 81歳未満
イオン銀行 71歳未満 80歳未満
中央労働金庫 66歳未満 76歳未満
フラット35
(ARUHI)
70歳未満 80歳未満

出典:2022年1月時点 公式ホームページと商品説明書より作成

あくまで上限のルールなので、審査によっては希望の返済期間にできない場合があります。

体力や収入の低下をふまえると、70歳までに完済できる計画が現実的です。ローン審査にも通りやすくなります。

一般的な目安で考えると借りすぎになる

50代の年収は高いので、一般的な「無理のない借り入れは年収の5~6倍」といった目安で考えると借りすぎになります。

年収を基準にローンを考えるなら、60~70歳の年収で考えるべきです。収入のピークを過ぎた継続的な年収を基準に考えれば、借りすぎを心配されにくいです。

無理のない借入額の決め方ついては、以下リンク先でも解説しています。

年収ごとの住宅ローン記事
年収350万円 年収400万円
年収500万円 年収600万円
年収700万円 年収800万円
年収900万円 年収1,000万円

返済期間にもよりますが、借入時の収入が高いほど借りすぎに気を付けましょう。

50代でローンを組むメリットとデメリット

50代でローンを組むメリットとデメリットを詳しく解説します。

メリットがデメリットを上回るかどうか、比較しながら確かめてみてください。

50代は将来の出費を予想しやすい

50代でローンを組む最大のメリットは、借入時の支払い能力が高い点です。ライフスタイルが確立されていて、自己資金をベースに無理のない返済計画が立てられます。

家族構成に大きな変化がないため、物件の広さやお部屋の数を決めやすいです。都市部にこだわらずに、立地の工夫で予算を抑えられます。

50代でローンを組むメリット
  • ・借入時点の収入や貯金が多く頭金が払える
  • ・物件の必要性が明確で予算が決めやすい
  • ・立地や広さの工夫で予算を抑えられる
  • ・返済期間が短いぶん金利負担が減らせる
  • ・老後の住まいが確保できて安心

返済期間が短いぶん金利の負担を減らせます。最適なローンが組めれば、現役のうちに老後に備えられます。

岩井
岩井
50代の住宅購入は、極端な予算を組まなければ失敗は防げます。手元にもお金を残して計画的なローンを組めば、現在の住居費よりも負担を抑えて老後に備えられます。

50代は収入が低下した後の返済が大変

50代は収入が低下した後の返済が大変です。返済期間が短いと毎月の返済額が大きく、年金だけでは返済が難しくなるケースもあります。

生活レベルが上がっているため、理想を求めると予算が高くなりがちです。高額な物件を選ぶと、払える金額でも希望の条件で借りられないケースが出てきます。

金融機関によっては大きな金額のローンが組めます。ただし、金融機関は家計までチェックしないため、返済が現実的かを家庭ごとに慎重に考える必要があります。

50代でローンを組むデメリット
  • ・返済期間が短く毎月の負担が大きい
  • ・定年後に収入が減り返済が大変
  • ・希望の条件で借りられないケースが増える
  • ・計画的な貯金や繰り上げ返済が必要
  • ・団信に加入できない場合がある

老後のゆとりを作るためには、計画的な貯金や繰り上げ返済が必須です。購入時の年収は高いので基準にせず、限度まで借りないように気を付けましょう。

持病がある場合は団信(団体信用生命保険)に加入できないケースが増えます。団信とは、もし返済中に亡くなったり重度障害になった際に、ローンの残りが消滅する保険です。

多くの金融機関で団信加入は必須で、健康状態をチェックされます。団信加入が任意のローンもありますが、万が一に備えて加入をおすすめします。

基準がゆるやかな「ワイド団信」もあるので、健康状態に不安がある場合は、ローン選びの際にチェックしてみてください。

岩井
岩井
物件選びやローン選びで工夫すれば、デメリットは減らせます。不安な部分があれば、不動産屋にも相談してみてください。予算に収まる最適な方法の提案が受けられます。

50代で無理のないローンを組む5つのコツ

50代で無理のないローンを組む5つのコツを、以下にまとめました。

  • ①老後の家計をシミュレーションする
  • ②自己資金の上限を決める
  • ③繰り上げ返済する前提のローンを組む
  • ④毎月の返済額は一定にしておく
  • ⑤窓口でローンのアドバイスを受ける

1つずつ詳しく説明します。

①老後の家計をシミュレーションする

50代で予算を決めるときは、まず老後の家計をシミュレーションするべきです。家庭ごとに収入や支出を長期的に考えましょう。

建物や車の維持費や、冠婚葬祭に備えて貯金ができる計画を立てたほうが良いです。手すりの設置や段差を減らすような、バリアフリーリフォームが必要な場合もあります。

受け取れる退職金や企業年金を把握しておきましょう。年金の見込み金額は、日本年金機構の「ねんきんネット」で確かめられます。

資金計画を長期的に確かめたいときは、金融広報中央委員会の「知るぽると」のライフプランシミュレーションなどが便利です。

②自己資金の上限を決める

自己資金の上限を決めておきましょう。貯金を減らしすぎずに、返済の負担を減らせる金額を見極める必要があります。

購入の予算は、自己資金と無理のないローンの合計です。予算を決めてから物件を探せば借りすぎを防げます。

購入の予算の決め方

  • 予算=自己資金+無理のないローン

無理のないローンは「返済負担率」も目安にできます。返済負担率(返済比率)とは、税込年収から返済に回す割合のことです。

一般的に、無理のない返済負担率は20~25%と言われています。統計でも、金利タイプに関わらず15~25%の範囲でローンを組む人が多いです。

返済負担率の統計表

出典:住宅金融支援機構 2021年4月 住宅ローン利用者の実態調査

50代の年収から考えると借りすぎてしまうため、60歳以降の年収の低下までふまえて、無理のない返済負担率を決めましょう。

また、税金や社会保険料を引いた「手取り年収」で考えるとさらに余裕が作れます。ローン審査の心配も減らせます。

借りたい金額が決まっていれば、住宅金融普及協会のシミュレーターでも返済負担率が確かめられます。

②他の借り入れは完済しておく

ローン審査では「総返済負担率」をチェックされます。他に借り入れがあると、借入可能額が減りますし、審査に通りにくくなります。

総返済負担率の上限は35~40%の金融機関が多いです。車のローンや教育ローンなど、返済中の支払いがあるなら、住居費を抑える必要があります。

チェックされる借り入れの例

  • ・車のローン(カーローン)
  • ・教育ローン、教育ローン
  • ・クレジットカードでの買い物
  • ・奨学金の返済
  • ・楽器や家電の分割払い
  • ・消費者金融での借り入れ
  • ・携帯電話本体の分割払い

金融機関はカードの支払い情報などの「信用情報」をチェックできます。過去に滞納歴や事故情報があると、どの金融機関でもローンが組めない可能性が高いです。

心当たりがある場合は、不動産屋に早めに相談してみてください。住宅ローンの審査に落ちる理由や対策については、次の記事でも解説しています。

▶住宅ローン審査に落ちる理由と対策はこちら

③繰り上げ返済する前提のローンを組む

繰り上げ返済する前提で返済期間を延ばせば、毎月の返済額を抑えられます。1年単位で延ばせるので、最長の期間に設定しましょう。

毎月の返済額に余裕があれば、計画的に貯金できます。余裕があるタイミングを見極めてマイペースに繰り上げ返済できます。

同じ金額のローンでも、返済期間の違いで毎月の負担は大きく変わります。借入額ごとに返済期間20~30年で比較してみました。

20年 25年 30年
1,000万円 約4.9万円 約4.1万円 約3.6万円
1,500万円 約7.4万円 約6.1万円 約5.3万円
2,000万円 約9.8万円 約8.2万円 約7.1万円
2,500万円 約12.2万円 約10.2万円 約8.8万円
3,000万円 約14.7万円 約12.2万円 約10.6万円
3,500万円 約17.1万円 約14.2万円 約12.3万円
4,000万円 約19.6万円 約16.3万円 約14.1万円

※フラット35、ボーナス払いなし、金利1.61%、元利均等返済方式

頭金を払ったり安く買える物件を選んで、借入額を抑える工夫が大切です。借入額が大きいほど、返済期間の違いの影響は大きいです。

ローンを一度組むと、返済期間を後から延ばすのは大変です。毎月の返済が最優先なので、最長の期間にして住居費の負担を抑えましょう。

繰り上げ返済は「期間短縮型」を選ぶ

繰り上げ返済は「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類あり、返済を早めたいときは期間短縮型を選ぶべきです。違いを簡潔にまとめました。

特徴
期間短縮型 ・返済期間を減らして完済を早められる
・毎月の返済額は変わらない
返済額軽減型 ・毎月の返済額を減らせる
・完済までの年数は変わらない

完済が近づいてから一気に繰り上げ返済するよりは、5~10年単位で定期的に残債務を見直すほうが金利負担を抑えられます。

繰り上げ返済の効果は、金融機関のシミュレーターなどで確かめられます。まとまった出費なので、繰り上げ返済するのは効果を確かめてからにしましょう。

繰り上げ返済専用のシミュレーターが金融機関のサイトにない場合は、住宅金融支援機構の「返済方法変更シミュレーション」が目安にできます。

岩井
岩井
一括の繰り上げ返済は、5万円ほど手数料がかかるケースがあります。一部繰り上げ返済は、ネット手続きなら無料の金融機関がほとんどです。

④毎月の返済額を一定にする

毎月の返済額は1年を通して一定にしたほうが良いです。返済額が違う月があると計画が立てづらいからです。

年2回支払いを増額する「ボーナス払い」は設定せず、毎月の返済額が一定にできる「元利均等返済方式」を選ぶのがおすすめです。

もう1つの支払い方法の「元金均等返済方式」や、毎月の無理のない返済額については、次の記事でも詳しく解説しています。

▶住宅ローンの月々の返済額の解説はこちら

⑤窓口でローンのアドバイスを受ける

住宅ローンを組むときは、窓口でアドバイスを受けましょう。借りたい金融機関が決まっているなら、金融機関の窓口やコールセンターで、借り入れの相談ができます。

家計の専門家のFPや不動産屋にも相談してみてください。ローン審査の不安の解決策や、融通が利きやすい「提携ローン」の提案が受けられます。

無理のない計画を立てるためには、客観的な視点が必要です。FPや不動産屋に、無料で相談ができるサービスも活用するべきです。

50代でローンを組む際の4つの注意点

50代でローンを組む際の4つの注意点をまとめました。無理のない借入額なら解決できる内容ですが、押さえておきましょう。

  • ①退職金は老後資金にするべき
  • ②持ち家にも固定費がかかる
  • ③金利のタイプはよく考えて決める
  • ④単独のローンで予算を決める

①退職金は老後資金にするべき

退職金があるなら繰り上げ返済にすべて回さずに、老後資金にするべきです。老後に必要な貯金額に大きな余裕が作れます。

厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査」より、勤続20年以上の退職給付の統計を表にまとめました。

大学卒 高校卒
勤続20~24年 1,267万円 525万円
勤続25~29年 1,395万円 745万円
勤続30~34年 1,794万円 928万円
勤続35年以上 2,173万円 1,954万円
平均額 1,983万円 1,618万円

出典:厚生労働省 平成30年就労条件総合調査(管理・事務・技術職)

勤続年数にもよりますが、退職金がすべて老後資金に回せる前提のローンを組めば、老後資金の心配は大幅に減らせます。

大切なのは、退職金の有無に関わらず、老後の生活費を確保できる計画を立てることです。

②持ち家にも固定費がかかる

持ち家にも固定費がかかるので、毎月の返済額を決めるうえで、忘れないようにしましょう。主に税金と維持費で、他にも必要に応じた費用があります。

住む限りかかる費用や、定期的な出費に備えて、毎月の返済額は月あたり3~4万円抑えて考える必要があります。

物件によって金額に差があるため、探す段階で不動産屋によく確認しましょう。以下で入居中に発生する主な費用をまとめました。

共通してかかる固定費
固定資産税 物件評価額の1.4%程度/毎年
都市計画税 物件評価額の0.3%程度/毎年
町内会費 数百~千円程度/毎月
室内の修繕費 実費(不具合が生じた場合)
マンションでかかる固定費
管理費+修繕積立金 合計3万円程度/毎月
駐車場(使う場合) 1~5万円/毎月
駐輪場代(使う場合) 数百~千円程度/毎月
戸建てでかかる固定費
外装の修繕費 50~100万円/約15年

不動産の所有者には、固定資産税と都市計画税(固都税)がかかります。軽減措置があり、年間で10~15万円が目安です。月に直すと「0.8~1.3万円」です。

マンションでは毎月、修繕積立金と管理費がかかります。住環境や資産価値を保つための費用です。

2020年度の東日本不動産流通機構の統計によると、管理費と修繕積立金の合計は、平均「約2.4万円」です。

ローンの完済後も支払いが続くので、家計には余裕が必要です。固定費については以下の記事でも詳しく解説しています。

持ち家の固定費に関する記事

▶修繕積立金と管理費の解説はこちら
▶固都税の解説はこちら

③金利のタイプはよく考えて決める

金利のタイプで負担が大きく変わるため、よく考えて決めるべきです。返済中は金利タイプの変更が難しい場合があります。

主に以下の4種類で、どの金利がお得かは考え方によって変わります。

全期間固定金利型 完済するまで金利が変わらない
変動金利型 定期的に金利が見直される
固定金利期間選択型 一定期間毎に固定か変動か選べる
ミックス型 固定金利と変動金利で分けて借りる

2022年4月時点での金利相場は、変動金利で約0.3~0.5%、固定金利で約1.0~1.6%です。固定金利は上昇傾向で、金融機関の割引や優遇がないとやや高いです。

固定金利型は、ローンを組んだ後は金利が変わらないメリットがあります。計画が立てやすいですが、金利の負担は大きいです。

変動金利型は、固定金利より低い金利で借りられます。返済中も金利が上昇するリスクがあるので、繰り上げ返済したり貯金しておく工夫が必要です。

期間選択型とミックス型は、固定金利と変動金利のリスクを分散するイメージです。

▶住宅ローンの種類や金利の解説はこちら

金融機関によって審査の傾向が違う

金融機関の種類によって審査の傾向に差があります。金利が安い金融機関で借りられないときは、審査に融通が利きやすい金融機関を選びましょう。

審査 金利
都市銀行
(メガバンク)
厳しいが便利 安い
ネット銀行 厳しい 安い
地方銀行
信用金庫
融通が利く傾向 高め
フラット35 基準が明確 固定金利のみ

地方銀行や信用金庫は、他の金融機関に比べて個別の事情を相談しやすいです。メガバンクで審査に落ちても借りられるケースがあります。

審査の基準に詳しいFPや、不動産屋にも相談してみてください。予算や事情に合わせて最適な金融機関を提案してもらえます。

④単独のローンで予算を決める

50代は単独のローンで予算を決めるべきです。夫婦それぞれがローンを組む「ペアローン」や、パートナーの収入を足す「収入合算」だと借りすぎてしまう傾向があります。

世帯収入を基準にローンを組むのは、完済まで共働き予定の場合に限ったほうが良いです。

返済中に片方の収入が減ったり、仕事が続けられなくなったりすると一気に大変になります。

共働きなら、老後に備えて貯金したほうが安心できます。世帯収入で組むローンの注意点は、次の記事で詳しく解説しています。

▶世帯収入を基準に組むローンの解説はこちら

50代におすすめのローンの組み方5選

50代におすすめのローンの組み方を5つご紹介します。返済に無理がなく、金利が安く特典の手厚いローンを組めると理想的です。

  • ①親子で住宅ローンを組む
  • ②減税を受けてから繰り上げ返済する
  • ③変動金利でローンを組む
  • ④金利や特典を比較してローンを選ぶ
  • ⑤資産価値が高い物件を選ぶ

①親子で住宅ローンを組む

子どもの了解があれば「親子リレーローン」で返済にゆとりが作れます。返済期間を長くして、将来的に親から子に住宅ローンを引き継ぐ方法です。

50代でローンを組むデメリットが、ほとんど解決できる方法です。

二世帯住宅を買うときや、同居するとき限定など、条件がある場合があります。フラット35では同居していなくても親子リレー返済が使えます。

ちなみに、親子それぞれがローンを組む「ペアローン」は、50代から無理に組まないほうが良いです。夫婦のペアローンと同様、借入額を増やしたいときの手段です。

②減税を受けてから繰り上げ返済する

繰り上げ返済は住宅ローン控除が終わってからにするべきです。「住宅ローン控除(減税)」とは、ローンの残りの最大0.7%を10~13年間も減税できる制度のことです。

借入額にもよりますが、ローンの残りが多いほうが控除の効果は大きいです。

減税が受けられる間は無理のない返済を続けておき、余ったお金を計画的に貯めて、繰り上げ返済に備えましょう。

住宅ローン控除を受けるための条件
  • ・床面積が登記簿上の面積40~50㎡以上
  • ・所得が一定(1,000万円~)以下
  • ・取得後6ヶ月以内に入居して住み続ける
  • ・家の半分以上が居住スペース
  • ・耐震基準を満たす(1982年以降の建築)
  • ・10年以上の住宅ローンを組む など

広さや耐震性の条件を満たせば、不動産取得税や登記費用も抑えられます。

税金は定期的に見直しがあるので、購入の際は最新の情報をチェックしましょう。住宅ローン控除については、次の記事でも詳しく解説しています。

▶住宅ローン控除の詳しい解説はこちら

③変動金利でローンを組む

変動金利でローンを組めば、低金利が続く間は金利負担が抑えられます。頭金を払ったり返済期間を短くして金利が抑えられるメリットを、さらに活かせます。

2000年頃から2022年現在まで、政府の金融政策で低金利が続いています。政策が続く限り、極端な金利上昇は起きないと言われています。

令和2年度の国土交通省の統計でも、変動金利で借りる人がもっとも多いです。5年分の統計をグラフにまとめてみました。

金利タイプの統計グラフ

出典:令和2年度 民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書

現在の金利相場だと、変動金利でローンを組んだほうが毎月の返済額を抑えられます。

ちなみに、固定金利と変動金利の相場は、決まり方が異なります。金融機関のホームページを見たり、ローンに詳しい不動産屋に質問して、最新の相場を確かめましょう。

④金利や特典を比較してローンを選ぶ

金融機関によって金利や特典が異なります。「住宅ローン比較窓口」などの比較サイトで、もっとも優遇が受けられる金融機関を探してみてください。

金利の安さだけでなく、手数料や団信の手厚さも比較するべきです。病気やけがで返済が難しくなった場合の保障は、金融機関ごとに大きく異なります。

返済期間が短く最長のローンより金利の負担が減るぶん、金利を0.2~0.3%上乗せして保障を手厚くするのも手です。

⑤資産価値が高い物件を選ぶ

資産価値が高い物件を選ぶと、老後資金の不足に備えられます。返済ができなくなった場合でも、売却してやり直しができます。

物件を探すときは、将来的に売ったり貸したりしやすいかも考えてみてください。

駅の近く、買い物環境が整っているなど立地が良い物件や、治安が良いエリアは人気があるので価値が下がりにくいです。

売却して賃貸として住み続ける「リースバック」や、自宅を担保にお金を借りる「リバースモーゲージ」といった方法もとれます。

オーバーローンの間は売却が難しい

売ってもローンを返しきれない「オーバーローン」の間は売却が難しいです。残債務より高く売れるまでは、計画的に返済を続ける必要があります。

オーバーローン状態を解消する時系列の図解

頭金を払うと、オーバーローンが解消できる日を近づけられます。物件によっては購入時より高く売れるケースもあります。

設備などのグレードが高い物件を選ぶときは、予算に無理がないか慎重にシミュレーションを重ねましょう。

50代の住宅ローン返済シミュレーション

50代で住宅ローンを組んだ場合の、返済シミュレーションをご紹介します。「フラット35のシミュレーター」を参考にしています。

返済期間や頭金による違いを確かめるために、物件は同じ条件にします。

シミュレーションの前提条件
  • ・購入物件 3,850万円
  • ・手付金 50万円
  • ・諸費用 300万円
  • ・フラット35 全期間固定金利
  • ・ボーナス払いなし
  • ・元利均等返済方式

シミュレーションは、全期間固定金利で考えたほうが良いです。変動金利の上昇するリスクをふまえたシミュレーションは難しいからです。

また、高めの固定金利で考えておけば、実際の返済に余裕が作れます。

返済期間が短いシミュレーション

50代で返済期間を短く設定したシミュレーションです。まずは頭金なしで試算してみます。

65歳の定年退職で、完済年齢を70歳、手付金と諸費用のみ現金で払う前提で計算しました。

返済期間が短いシミュレーション

  • 借入時年齢:52歳
  • 年収:800万円
  • 自己資金:350万円
  • 金利:1.610%(頭金なし)
  • 18年ローン:3,800万円
  • 毎月の返済額:約20.2万円
  • 60歳時の残高:約2,246万円
  • 完済時年齢:70歳
  • 金利負担:約579万円
  • 総返済額:約4,379万円

繰り上げ返済せずにローンを払い続けた場合、定年後の5年間は毎月の負担が大きいです。

借入時の年収で考えても返済負担率は約30%で、大変な返済計画です。退職金で一括返済する場合でも、老後資金を貯金できている必要があります。

返済が難しくなったら、金融機関に期間の見直し(リスケジュール)は相談できます。ただし、確実に応じてもらえる保証はないので、不安が残ります。

頭金を最初に払うシミュレーション

前述のシミュレーションとの比較で、頭金を約30%(1,200万円)払う形で試算してみます。

フラット35は、頭金を10%払うと金利が安く借りられます。

頭金を最初に払うシミュレーション

  • 借入時年齢:52歳
  • 年収:800万円
  • 自己資金:1550万円
  • 金利:1.350%(頭金10%以上)
  • 18年ローン:2,600万円
  • 毎月の返済額:約13.5万円
  • 60歳時の残高:約1,521万円
  • 完済時年齢:70歳
  • 金利負担:約330万円
  • 総返済額:約2,930万円

頭金を払ったおかげで現実的な返済計画にできました。借入時の返済負担率は約20%です。毎月の返済額が6.7万円減らせて、金利負担は約250万円抑えられています。

毎月3~4万円を貯金して、定年退職時に500万円繰り上げ返済する想定で「返済方法変更シミュレーション」も試してみました。

65歳時点で、期間短縮型で500万円繰り上げ返済すると3年3ヶ月短縮できる結果が出ました。定年後の返済期間は2年未満で済みます。

岩井
岩井
自己資金から多く払えるなら、返済期間が短くても無理のない計画が立てられます。繰り上げ返済と組み合わせれば、50代から住宅ローンを組むのは遅くはありません。

返済期間を延ばしたシミュレーション

返済期間を延ばしたシミュレーションを試してみます。頭金は払わずに、手付金と諸費用のみ現金で払う前提で計算しました。

完済年齢の上限までは延ばせず、25年ローンを組んだ設定で試算してみます。

返済期間を延ばしたシミュレーション

  • 借入時年齢:52歳
  • 年収:800万円
  • 自己資金:350万円
  • 金利:1.610%(頭金なし)
  • 25年ローン:3,800万円
  • 毎月の返済額:約15.3万円
  • 60歳時の残高:約2,745万円
  • 完済時年齢:77歳
  • 金利負担:約818万円
  • 総返済額:約4,618万円

返済負担率は約23%で、収入が下がらなければ現実的なローンです。ただし、このままでは収入が減ってからの返済が難しく、金利負担も大きいです。

頭金を払わなかったぶん、65歳時点で1,200万円繰り上げ返済すると、定年後の返済は5年未満にできます。計画的な貯金と繰り上げ返済で、健康なうちに完済できそうです。

実際は、自己資金が少ない場合は予算を抑えるのが効果的です。FPや不動産屋に相談すれば、予算自体を抑える方法や、予算内で理想に近づける方法の提案が受けられます。

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