最終更新:2022年6月9日

賃貸物件の経年劣化とは?どこからが経年劣化になるの?という疑問を解決します。
経年劣化の対象範囲や修繕費用を支払わなくて良いケースなどを紹介します。
原状回復と契約時の特約事項、経年劣化に関するトラブル対処方法も紹介するので、ぜひ参考にしてください!
この記事は、宅地建物取引士で現役の賃貸営業をしている豊田さんに監修して頂きました。
不動産屋「家AGENT」の営業マン
宅地建物取引士
賃貸の仲介会社「家AGENT」の現役の営業マン。宅地建物取引士の資格を取得している。営業マンとしての経験と専門知識を活かして、お部屋探しや入居審査についての不安や疑問を解決しています。
経年劣化とは時間が経過して品質が低下すること
経年劣化とは、使用する時間が経過するとともに品質が下がることです。
お部屋の壁紙や床が日照によって変色したり、雨や湿度で窓枠などのゴムが傷むことを指します。また、浴室やトイレの黄ばみなども経年劣化になります。
賃貸物件の場合、退去費用には経年劣化でできた傷や汚れの修繕費用は含まれません。すべて大家さんの負担になります。
通常生活でできる傷や汚れは「通常損耗」
普通に暮らしていればできてしまうお部屋の傷や汚れは「通常損耗」と言います。
フローリングの擦り傷や、家具の重みでできたへこみ、テレビや冷蔵庫の電気焼けなどが通常損耗にあたります。

原状回復費用で負担するのは「特別損耗」
特別損耗とは、通常の生活ではできないような傷や汚れ、へこみなどを故意に作ってしまうことです。原状回復するための修繕費用は全て借主の負担になります。
お部屋の手入れや管理を怠った結果できてしまった、カビや油汚れなども特別損耗になることがあります。

後ほど、特別損耗になるケースを詳しく解説していきます。
修繕費用を支払わなくても良いケース
修繕費用を支払わなくても良い「経年劣化」と「通常損耗」にあたるケースをまとめました。
以下は、入居者が修繕費用を負担する必要がないとされています。あくまで一部の例なので、例外的に請求される場合ががります。
- ・耐久年数経過による設備品の故障
- ・破損や紛失以外の鍵の取り替え
- ・浴室やトイレの壁の黄ばみ
- ・日照による畳やクロスの変色(日焼け)
- ・ポスター、カレンダーなどの跡
- ・網戸の破れ
- ・冷蔵庫、テレビによる壁の電気焼け
- ・画びょう、ピンの穴
- ・フローリングの擦り傷
- ・エアコン設置による跡
- ・家具の重みでできたへこみ
設備ごとに「耐久年数」の目安が定められています。網戸は入居者の不注意で破かない限り、修繕費用は大家さんの負担です。
ポスターやインテリアを壁に飾るときに画びょうやピンで穴を空けても、通常損耗の扱いになります。穴が大きかったり、下地ボードに穴が空いた場合は自己負担になります。
床がタンスやベッドなどの重い家具でへこんでも入居者に負担はありません。ただし、あまりにもへこみが深い場合は修繕費用を取られる可能性があります。
設備ごとの耐久年数は6~8年が目安
耐久年数とは、設備の資産や価値が残っている期間のことで、食品などの賞味期限のようなものです。
設備の耐久年数によって、入居後何年住めば経年劣化に当てはまるのか決められます。
以下は、賃貸のお部屋にある設備の耐用年数をまとめたものです。
耐用年数 | 設備 |
---|---|
5年 | 流し台 |
6年 | 壁紙、カーペット、エアコンなど |
8年 | 書棚、タンス、金属製ではない家具 |
15年 | 便器、給排水設備、金属製の家具など |
耐用年数が6年のものは、同じお部屋に6年住み続ければ経年劣化とみなされるので、退去時の費用は大家さんが負担します。
ただし、フローリングや畳は耐用年数がないので、建物自体の耐用年数として考えます。
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修繕費用を支払わなければならないケース
修繕費を支払う必要がある「特別損耗」のケースを10個紹介します。
紹介するケースのなかには、対処すれば修繕費用を抑えられるものがあるので、あわせて解説していきます。
- ・引っ越し時にできた傷や汚れ
- ・タバコのヤニによる黄ばみ
- ・キャスター付の椅子による傷やへこみ
- ・清掃不足による油汚れやカビ
- ・冷蔵庫下のサビやカビ
- ・収納を増やすために壁に開けた穴
- ・ペットによる傷や汚れ
- ・使用していた設備が壊れて放置したもの
- ・カギの紛失や変形
- ・故意にできた傷や汚れ
引っ越し作業でできた傷や汚れ
引っ越し時の荷物の搬入によりできた壁やフローリングの傷や汚れは、自然にできるものではないので経年劣化に当てはまりません。
引っ越し業者に頼んだ場合は、壁や床などを傷つかないように保護してくれますが、自分で作業する場合はダンボールなどを貼り付けて作業すると良いです。
タバコのヤニによる黄ばみ
タバコのヤニによるクロス(壁紙)の黄ばみは、普通に生活していたらできない汚れとされるので、特別損耗として扱われます。
「タバコを吸う人であれば、自然にできる汚れではないか?」という人がいますが、黄ばみの原因がタバコなので自然にできる汚れではありません。
高額な修繕費用を請求されないためには、換気扇の下やベランダで吸って、お部屋の中では吸わないようにしましょう。
キャスター付きの椅子による傷やへこみ
キャスター付き椅子やキャリーバックによる傷やへこみは、修繕費用が自己負担になる可能性があります。
キャスター付き椅子やキャリーバックを転がせば傷ができると事前に予測できるので、故意的過失になります。
清掃不足による油汚れやカビ
長年掃除をしていなくて垢やカビなどがこべりついてとれない場合は、管理を怠った責任が入居者にあるので経年劣化に当てはまりません。
埋め込み式の換気扇などの業者による掃除が必要なものは、経年劣化としてみなされます。
少しでも修繕費用を抑えたいのであれば、ホームセンターやドラッグストアで清掃道具が売っているので、退去日までに掃除しましょう。
冷蔵庫下のサビやカビ
冷蔵庫下のサビやカビは、すぐに拭いて消えるものであれば経年劣化になりますが、長年放置して拭いても消えない場合は自己負担です。
サビやカビは冷蔵庫下の湿気や水漏れが原因です。汚れを放置していたとみなされるので、入居者が掃除を怠ったと判断されます。
ホームセンターではフローリング用のカビ取り剤が販売されているので、1度試してみると良いです。ただし、汚れの範囲が広い場合はきれいに取れない可能性があります。
収納を増やすために壁に開けた穴
付長押(つげながし)やピクチャーレールのように、壁に穴をあけて洋服や写真などを飾れる器具を取り付けた場合は、自ら壁に傷をつけているので特別損耗になります。
カレンダーをかけるための画びょうの穴は、壁紙の後ろにある下地ボードを貫通していなければ、日常生活に必要な穴として経年劣化に含む場合があります。
ペットによる傷や汚れ
ペットによる、壁や柱の傷や汚れは経年劣化に当てはまりません。
尿や糞などによるシミなどもキレイに掃除すれば未然に防げたことなので、飼い主の責任放棄とみなされます。
使用していた設備が壊れて放置していたもの
故意的に壊したわけではなくても、ドアノブなどの設備や備品が壊れて退去日まで大家さんに連絡がなく放置されていたものは修繕費用を請求されます。
また、自分で応急処置をした場合でも、大家さんに壊れたという連絡を入れていない時点で自己責任になります。
お部屋の設備が壊れたり、異常を感じた場合はすぐに不動産会社や管理会社に連絡をいれてください。
鍵の紛失や変形
鍵の紛失や変形は、使用していた入居者の責任になります。
ただし鍵穴の破損の場合は、よほど変な使い方をしていない限り普通に生活していて壊れるものではないので、経年劣化による破損と判断されることが多いです。
故意的にできた傷や汚れ
壁を殴ってできた傷や物を落としてできた傷など、普通に生活していてできるはずのない傷や汚れは経年劣化に当てはまりません。
誤って壁に穴を空けてしまったり、大きなへこみを作ってしまった場合は、不動産屋や管理会社に連絡するべきです。
経年劣化の範囲はガイドラインで定められている
国土交通省により「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が定められています。
ガイドラインには、お部屋の退去に関する原状回復の範囲を定めており、どの範囲が経年劣化に含まれるのかについても記載されています。
退去前に、設備の傷や汚れが経年劣化に当てはまるか知りたい場合は、ガイドラインを確認しましょう。
契約書の内容が優先されることがある
ガイドラインで確認しても、契約書に特約事項がある場合は契約書の内容が優先されます。
例えば「退去時のエアコン清掃代は一律●万円必要」など書かれていた場合は、支払う必要があります。
ただし「部屋の修繕にかかる費用はすべて入居者が負担する」などの一方的な内容の特約は、無効だと主張できる場合があります。
修繕費は敷金から差し引かれる
原状回復のために使われる修繕費は、入居時に支払った敷金から差し引かれるようになっています。
支払った敷金よりも請求された修繕費が下回れば、余った分は退去時に返還されます。上回った場合は退去時に追加で支払うわなければなりません。
経年劣化や通常損耗だけであれば、基本的に敷金は全額返ってきます。ただし、物件によってはクリーニング代も入居者に請求する場合があります。
敷金なしの物件は退去費用が高くなる
敷金礼金ゼロのような、入居時に敷金を払わずに契約した物件は、退去費用が高くなる可能性があります。
本来であれば大家さんが負担するべきクリーニング代や、お部屋の消毒代を請求されるなど、相場より高い退去費用を請求されることが多いです。
敷金なしの物件は初期費用は抑えられますが、退去時にはお金がかかってしまいます。物件によっては、敷金を支払った物件のほうがお得になります。
退去費用を高額請求された場合の対処法
不動産から渡された退去費用の見積もりに経年劣化分が入っているのでは?と思ったときや、高額請求された場合の退去方法を紹介します。
最悪の場合、民事裁判を起こすことも手ですが、紹介する2つの方法を試してください。
見積もりに疑問を感じたら不動産屋に確認する
見積もりに疑問を感じたら、すぐに不動産屋に「〇〇って経年劣化に当てはまるんじゃないですか?」と確認してください。
国土交通省の「原状回復のガイドライン」と照らし合わせて聞いてみると、より話がまとまりやすいです。
筋が通っていれば、経年劣化分を除いた見積もりが再度郵送されてきます。
消費生活センターなどに相談する
不動産屋や大家さんに確認したけど納得がいかないという人は、消費者センターや国民生活センターに電話しましょう。
「退去費用の見積もりをもらったんですが、明らかに経年劣化になるものが含まれているので相談させてください」と伝えれば、窓口の人が対応してくれます。
退去費用は分割払いできない
アパートの退去費用は基本的に分割払いができません。現金での一括振り込みが多いです。
退去費用がクレジットカード決済に対応している場合は「あとから分割」や「あとからリボ」変更すれば、分割払いが可能です。
大手不動産屋の「大東建託」や「レオパレス21」などが、退去費用のクレジットカード決済に対応しています。
初期費用を分割すれば負担を抑えられる
新居の初期費用を分割にすれば、退去費用が高くなっても、新生活を始める際の負担を抑えられます。不動産屋によって、使える物件やカードに制限があるので確認しておきましょう。
ネット上の不動産屋「イエプラ」は、全物件クレジットカード決済に対応しています。新しくカードを作る必要がないので、既存カードのポイントが貯められます。
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チャットやLINEでやり取りするので来店不要です。忙しくて不動産屋に行く暇がない人も是非利用してみてください。