「借地権マンションとは?」「普通のマンションと何が違う?」などの疑問にお答えします!
借地権マンションのメリットとデメリットを比較して、購入に向いている人の特徴を解説します。また、借地権マンションに関するQ&Aも紹介します。
この記事は、ファイナンシャルプランナーで、宅地建物取引士の岩井さんに監修してもらいました!
チャット不動産イエプラ メディア事業部
ファイナンシャル・プランナー
宅地建物取引士
日本FP協会認定のFP。不動産やライフプランに関する専門知識と経験を活かして、最適な物件選びから、長期的にみて損しない住宅購入までをサポートしています。一人暮らしやファミリー世帯など、幅広い世帯からリピートをいただいています。
目次
借地権マンションとは?
借地権マンションとは、地主から借りた土地(借地)に建てたマンションのことです。入居者は毎月、地主に土地の代金(地代)を払います。
土地の借りられる期間には限度が設定されています。契約期間が終了したら、土地を更地にして地主に返すのが原則です。
契約内容によって更新の有無などの違いはありますが、取り壊しのタイミングで基本的に退去する必要があります。
事業目的の借地権もありますが、ここでは居住目的の借地権について解説していきます。
借地権マンションは主に2種類ある
借地権マンションの種類は、大きく分けると「普通借地権」と「定期借地権」の2つです。
大きな違いは、更新できるかどうかです。普通借地権は更新できますが、定期借地権はできません。
普通借地権 | 定期借地権 | |
---|---|---|
契約期間 | 30年以上 | 50年以上 |
更新 | できる | できない |
普通借地権は、30年以上の契約期間で設定します。1回目の更新では20年延長、2回目以降は10年ずつ延長できます。更新期間は、より長く定めることも可能です。
定期借地権は更新がないぶん最初の契約期間が長く、一般的に50年以上で設定されます。契約が終わったあとは土地を更地にして地主に返します。
定期借地権はさらに種類が分かれますが、マンションの場合は「一般定期借地権」がほとんどです。
法改正より前の物件は旧借地権と表記される
借地権は平成4年8月に法改正がありました。改正前の借地権マンションは、物件情報で「旧借地権」などと表記されます。
法改正より前は定期借地権がなかったため、旧借地権のマンションは更新できます。旧借地権の更新期間は長く、コンクリート造の物件なら30年延長できます。
契約時に土地に関する一時金がかかる
借地権マンションでは、契約時に「保証金」や「権利金」など、土地に関する一時金がかかります。「販売価格に含む」とされているケースもあります。
保証金とは、地代などの不払いに備えて地主に預けるお金です。保証金は、退去時に無利息で返還されます。相場は土地の価格の10~15%程度です。
権利金は、地主へのお礼金や、地代の前払いを兼ねているお金です。基本的に、退去時には返還されません。相場は土地の価格の60%程度です。
一時金は物件によって異なるので、マンションの契約前に必ず確認しましょう。
借地権マンションは数が少ない
借地権マンションは数が少ないです。国土交通省の統計によると、平成5年~令和2年までの分譲マンションの9.0%でした。
同統計によると、借地に建てられたマンションの多くは賃貸物件です。短期間で入居者が変わる賃貸は、土地を買うよりコストが抑えられる借地と相性が良いためです。
借地権マンションは、見方次第でお得に住める物件です。以降で、メリットとデメリットを解説していきます。
借地権マンションのメリットは価格の安さ
借地権マンションの最大のメリットは、価格が安いところです。購入資金をなるべく抑えたいなら、借地権マンションがおすすめです。他のメリットもまとめてみました。
- ・所有権のマンションと比べて価格が安い
- ・土地に関する税金がかからない
- ・好立地に建てられやすい
以降で1つずつ解説していきます。
所有権のマンションと比べて価格が安い
借地権マンションは、所有権のマンションと比べて価格が安いです。通常含まれる土地代が、販売価格に含まれていないからです。
相場の約80%程度の価格で買えるケースがあります。予算がなかなか合わない人でも買いやすいです。
しかし、毎月の地代を払う必要があります。お得かどうかは、月々の支払いが高くなってないかで確かめましょう。
土地に関する税金がかからない
借地権マンションは土地に関する税金がかかりません。土地が所有権のマンションより、固定資産税と都市計画税を抑えられます。
内容 | |
---|---|
固定資産税 | 物件評価額の1.4%程度/毎年 |
都市計画税 | 物件評価額の0.3%程度/毎年 |
通常は、お部屋と土地の両方に税金がかかります。借地権マンションの場合は、お部屋ぶんのみの税金で済みます。
通常のマンションだとかかる税金を払わなくて済むので、家計に余裕が作れます。
岩井
好立地に建てられやすい
借地権マンションは好立地に建てられやすいです。地主は価値の高い土地を手放さずに、活用し続けたいからです。
借地権であればいずれ土地が戻ってきます。あえて地主は土地を売却せず、建設会社などに貸して資産を運用しています。
所有権のマンションより安く買えるため、相場が高いエリアでも、予算に収まるマンションが見つかる可能性があります。
借地権マンションのデメリットは契約期間が決まっていること
借地権マンションのデメリットは、契約期間が決まっていることです。購入しても、借地の契約更新がなければ、期限で手放さないといけません。他のデメリットもまとめました。
借地権マンションのデメリット
- ・将来的にお部屋を手放さないといけない
- ・月々のコストがかかりやすい
- ・住宅ローンの審査が通りづらい
- ・土地の住宅ローン控除が使えない
事前に注意点を抑えておけば、購入を失敗しにくいです。以降で1つずつ解説していきます。
将来的にお部屋を手放さないといけない
借地権マンションは、いつかお部屋を手放さないといけません。将来、土地を地主に返す必要があるからです。
定期借地権だと更新自体がないため、入居者は基本的に退去を拒否できません。
旧借地権か普通借地権なら更新できますが、土地価格の3~5%の更新料がかかるケースが多いです。支払い方法は管理組合のルールによりますが、大きな出費になります。
月々のコストがかかりやすい
借地権マンションは、月々のコストがかかりやすいです。主に地主に払う「地代」や、建物の建て壊しに備える「解体積立金」です。
基本的に、毎月の固定費として払う方法が一般的です。地代は数年ごとに見直しの可能性があり、値上げのリスクがあります。
借地権マンションは価格が安いですが、トータルで損しないか考える必要があります。
月々かかるコストは他にもある
月々かかるコストは他にもあります。代表的なものをまとめました。
費用 | |
---|---|
管理費+修繕積立金 | 合計3万円程度/毎月 |
駐車場(使う場合) | 1~5万円/毎月 |
駐輪場代(使う場合) | 数百~千円程度/毎月 |
町内会費 | 数百~千円程度/毎月 |
室内の修繕費 | 実費(不具合が生じた場合) |
毎月の住居費が生活費を圧迫しないように、事前に確かめておきましょう。マンションの維持費については、次の記事でも詳しく解説しています。
住宅ローンの審査が通りづらい
借地権マンションは、住宅ローンの審査が通りづらいです。物件の「担保価値」を低く見られるからです。
担保価値とは、金融機関から見た物件の価値です。万が一返済が滞ったとき、金融機関は担保にかけた物件を売却して、貸したお金を回収します。
ローン審査に通っても、希望の金額まで借りられなかったり、返済期間に条件を付けられるケースがあります。
- ・借入希望額まで借りられない
- ・返済期間が短くなる
- ・完済後に借地の契約期間が10年以上は必要
例えば、借地の残りの契約期間(残存期間)が30年の場合、住宅ローンを最長20年で完済を求められる可能性があります。返済期間が短いと、毎月の返済額が増えて大変です。
岩井
土地の住宅ローン控除が受けられない
借地権マンションは、土地ぶんの住宅ローン控除が受けられません。所有していない部分は制度を利用できないからです。
住宅ローン控除は、毎年のローン残債務に応じて減税できる制度です。通常のマンションであれば制度をフルで受けられますが、借地権マンションは土地以外で控除を申請します。
ちなみに、契約時にかかった一時金のうち、住宅ローン控除の対象になるものがあります。各リンク先で詳細を確認できます。
適用の範囲 | |
---|---|
保証金 | 一定の計算方法で控除額が決まる |
権利金 | 前払いした地代以外の部分 |
住宅ローン控除の対象かどうかは、不動産屋や税務署に問い合わせましょう。以下の記事でも詳しく解説しています。
マンションのお部屋部分で控除を受ける方法
マンションのお部屋部分で控除受けるには、一定の条件があります。
- ・床面積が登記簿上の面積40~50㎡以上
- ・所得が一定(1,000万円~)以下
- ・取得後6ヶ月以内に入居して住み続ける
- ・家の半分以上が居住スペース
- ・耐震基準を満たす(1982年以降の建築)
- ・10年以上の住宅ローンを組む など
住宅ローン控除は、新築と中古などで減税を受けられる金額が異なります。
物件探しと並行して確かめるのが面倒な人は、不動産屋にまとめて問い合わせるのが手っ取り早いです。
借地権マンションが向いている人の特徴
借地権マンションが向いている人の特徴をまとめました。住み替え前提なら、所有権マンションよりコストを抑えられる可能性があります。
- ・期限付きでも安く住みたい
- ・住む期間に目途が立っている
- ・コストを抑えて好立地な物件に住みたい
- ・資産価値より利便性を重視している
- ・相続の予定がない
事前にチェックするべき項目は多いですが、賃貸物件を借りるより費用を抑えて、住みやすい物件を買える可能性があります。
資産としては買わないほうが良い
借地権マンションは、資産としては買わないほうが良いです。土地の残存期間が短くなるほど、物件の価値が低下するからです。
子どもに残す資産としての購入は損しやすいです。資産として買うなら、土地の所有権まで持てるマンションを買うのをおすすめします。
借地権マンションに関するQ&A
借地権マンションに関するQ&Aを、チャット不動産イエプラの岩井さんに回答してもらいました。
実際に経験した内容をふまえての回答なので、ぜひ参考にしてください。
- Q1.土地の所有者が変わった場合どうなるの?
- Q2.一時金をローンに組み込める?
- Q3.地代が急に値上げすることはある?
- Q4.売却には地主の許可が必要?
- Q5.室内をリフォームしても大丈夫?
- Q1.土地の所有者が変わった場合どうなるの?
- A 同じ契約内容のまま新しい地主に引き継がれます。
土地の所有者が変わっても、同じ契約内容のまま新しい地主に引き継がれます。入居者には特段、影響はありません。
ただし、土地の存続期間も変更がないので、延長扱いにならない点に注意です。
- Q2.一時金をローンに組み込める?
- A 初期費用の項目はローンに組み込める可能性があります。
契約時の保証金や権利金など、初期費用(諸費用)は住宅ローンに組み込める可能性が高いです。
担保評価が低いと、金融機関によってはローンに組み込めなかったり「頭金」を払わないといけないケースがあります。
物件によって異なるので、住宅ローンに詳しい不動産屋に確認しましょう。
- Q3.地代が急に値上げすることはある?
- A 可能性は低いです。
地代が急に値上げする可能性は低いです。緩やかに値上げしていくケースがほとんどです。
値上げは、物価の変動があったときにおこなわれます。地代の見直しは3~5年ごとが目安です。
- Q4.売却には地主の許可が必要?
- A 必要です。
売却時には、事前に地主の許可が必要です。許可を取らないと、売却が無効になる可能性があります。
また、許可をもらう際に地主への承諾料を払う場合があります。相場は、土地の価格の5~15%程度です。
- Q5.室内をリフォームしても大丈夫?
- A 基本的には問題ありません。
室内のリフォームは基本的に問題ありません。しかし、マンションの契約内容に「増改築禁止」の特約がある場合は、地主への許可が必要です。
マンションによって、契約内容が異なります。リフォーム希望であれば、事前に確かめておきましょう。
リフォームやリノベーションに関する記事は、以下で解説しています。
借地権マンションは、メリットとデメリットをよく整理して検討しましょう。
購入に関する悩みやローン選びの方法は、不動産屋に相談すると良いです。
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